アファメーションとは、肯定的な言葉を自分の内側に語りかける技術ですが、効果的に活用することによって、あなたの可能性や手にする結果を一気に高めることができます。
ただし、使い方を間違えると、
効果どころか「何をやってもムダ、結局自分は変われない」と、
否定的な自分を強化してしまいます。
1.アファメーションとは何か
アファメーションとは、なりたい自分になるための言葉による思い込みづくりのことで、「肯定的な自己暗示」「肯定的な自己説得」「肯定的な自己宣言」とも言われます。
なりたい自分にふさわしい文言をつくって、何度も言ったり、見たり、聞いたりすることで、自分自身に健全な「思い込み」をつくることです。
パソコンにワードソフトが入っているから、文章作成ができるように、「やればできる」、「私には決断力がある」、「私は必ず目標を達成できる」といった思い込みのソフトで、理想の状態やなりたい自分になるための技法のことです。
「やる気を高めたい時」、「リラックスしたい時」、「ピンチや逆境を打開したい時」といった意識を素早く切り替えたい時にも役立ちますし、思い込みの力を活用すれば、無意識に自然体で、積極的な思考や行動ができる効果が期待できます。
2.思い込みの影響と効果
アファメーションでできた思い込みは、私たちの脳と心に影響を与え、目標達成のための建設的な思考や行動、発想など、無意識に自然にコントロールできる力を持ちます。
ここでは思い込みの影響や効果について3つご紹介します。
2-1.RASの効果(必要な情報を収集できる)
脳にはRASと呼ばれる機能があります。
これは、Reticular Activating Systemの略で、日本語では網様体賦活系(もうようたいふかつけい)と訳されます。
様々な情報の中からあなたにとって重要なことや関心事が、優先的に選ばれて意識にあがってくる機能であり、情報のフィルターのことです。
「私はできる」といったアファメーションを活用することによって、できる可能性を自然と見つけ出し、それに伴うヒラメキやアイデアだけでなく、「動くなら、今だ!」とチャンスやタイミングに鋭敏に脳が反応するようになります。
2-2.プラシーボ効果(自分のパフォーマンスに影響を与える)
プラシーボ効果とは偽薬効果ともいわれ、医者が出す薬に有効成分が入っていなくても、患者が信じていれば、症状が回復するというもので、それを検証した実験もあります。
つまり、「これは効く」「私にも効く」「病状は回復する」といった思い込みができれば、実際に回復するというものです。
また他の実験では、被検者に目隠しをして、「腕にアイロンの先を当てます」といって鉛筆の先で腕に触れると、そこが赤くはれてくるという反応や「これから漆を塗ります」といって水をつけると、その部分がかぶれてくる、という実験結果もあります。
つまり現実に反応するのではなく、私たちは「思い込み」に反応しているということです。
私たちの人生に置き換えれば、「解決策は必ず見つかる」といった思い込みができれば、自ずとその実現に必要な思考や学習や行動を含むパフォーマンスを発揮できるようになります。
2-3.ピグマリオン効果(他者への関りに影響を与えることができる)
ピグマリオン効果とは、この人は優秀だと思い込みながら接していけば、その人は優秀になるというものです。(逆に期待しないでいる人は、その通りの結果を出すというゴーレム効果と呼ばれるものもあります)
子どもへの教育、夫婦との関係にも効果を発揮することができるようになります。
アファメーションを活用し、健全な思い込みを作ることによって、以下のような効果があります。
目標に向かって自然に行動できるようになる。
思考や発想が自動的に理想の状態に向かい動き出す。
学習やスキルアップの効率がムリなく高まる。
チャンスに強くなり、人に対する影響力が高まる。
健康面やお金などバランスがとれた人生を築くことができる。
結果として、「引き寄せ」と言われるような向こう側から目標が近づいてくる感覚が生まれてきた!
そんな表現をする方もいます。
3.アファメーションの作成「7つの基本」
3-1.肯定的な表現にする
肯定的とは、あなたが手に入れたいもの、ほしいもの、引き寄せたいものを文章にするということです。
「××ではない自分」ではなく、「〇〇している自分」といった文を作るということです。
【ダメな例】
私は、おどおどしない自分だ。
私は、不健康にならない。
私は、人前でも緊張しないようにする。
【肯定的に表現された例】
私は、堂々としている自分になりつつある。
私は、より健康になっている。
私は、人前でリラクッスすることを楽しめている。
事例でわかるように、欲しくない状態ややめたいことを文章にするのではなく、
欲しい状態、なりたい状態が記されていることが重要です。
「白い猫をイメージしないでください」
こういった文章を理解しようとするとき、私たちの脳はそのことを理解しようとして「白い猫」を意識したり、イメージしないと処理できない特徴があります。
ですので、「しない」代わりに「何をしたいか」。
「やめたい」代わりに「どうなりたいか」。という表現に変換しましょう。
3-2.型に当てはめる
実践心理学、また脳の取扱説明書と呼ばれるNLP(神経言語プログラミング)では、私たちにプログラミングされている思い込みの文言には、いくつかの型があると考えられています。
一つはX=Y。もう一つはX⇒Yという型です。
■ X=Y(XイコールY)
X=Yとは、XとYの関係がイコールである、という型です。例としては、
私は、できる
私の能力は、卓越している
私の話は、人を感動させることができる
というものです。
■X⇒Y(XだからY)
もう一つのX⇒Yは、
「Xだから、Yである」、また「Xするから、Yになる」、という因果関係を表す型です。
私だから、できる
行動すれば、達成できる
自分を大切にするから、人を大切にすることができる
こういった型を活用することで、思い込みはつくりやすくなります。
3-3.現在形、または現在進行形にする
「脳は現実とイメージの区別がつき難い」と言われています。
ですから、アファメーションを行うときには、今、起きているかのような文言にしていきます。
例としては以下のように作ります。
今、2030年。私は、独立している
私は、より賢くなりつつある
こうしている間にも、私の魅力は増している
3-4.能力レベルと存在レベルを使い分ける
アファメーションには二つのレベルのアプローチがあります。
一つは「能力レベル」、もう一つは「存在レベル」に対するアファメーションです。
■能力レベルのアファメーション
「私の説得力は、日々ますます卓越している」
「私の文章は、人を魅了し感動させることができる」
「私のアイデアは、人を幸せにする」
といったもので、自分の存在そのものではなく、身につけたいスキルに対するアファメーションです。
■存在レベルのアファメーション
「私には幸せになる価値がある」
「私は愛される価値がある」
「私は成功するに値する」
と、存在そのものに対するアファメーションです。
私たちの日常で影響が大きいのは、「存在レベル」に関する認識です。
例えば、説得力がない、時間管理ができない、といったことは、知識不足や経験不足が理由で停滞しているだけで、やり方を学び、身につけるための研磨やトレーニングを習慣になるまで取り組むことで解消できます。
しかし、「存在レベル」の認識が低いままだと、そういった知識を手に入れようともしません。
知識を手に入れたとしても、「どうせムリ」「やってもムダ」といった抵抗する内側の声に影響を受けて、何も行動を起こしませんし、行動を起こしたとしても途中であきらめます。
パソコンのソフトに例えるなら、
「能力レベル」はアプリ
「存在レベル」はOS
というように捉えると理解しやすいと思います。
OSが入っていない、また適切に機能しないパソコンには、どんなに素晴らしい役立つアプリであっても稼働しませんし、インストールすらできません。
あなたが何かを何し遂げたい、そう思ったとき、それを止めるのは「能力レベル」なのか、それとも「存在レベル」なのか、まずはそこに気づけることが重要です。
3-5.ホリスティックな視点をもつ
ホリスティックとは、「全体的」「包括的」を意味する言葉です。
例えば、あなたが仕事上の目標を達成しても、家族の誰かが悲しむようなものだと、ホリスティックな観点が欠けてしまい、トータル的に人生はうまくいきません。
独りよがりであったり、罪を犯すような、倫理観をなくすようなものではなく、
そのことが実現されると、あなた自身だけでなく、あなたの周囲も満たされるような視点、つまりWin-Winが成り立つような意識をもった文章が大切です。
例としては以下のようなものが挙げられます。
私が自分らしく生きることで、周囲は喜ぶ
仕事で結果を生み出すということは、社会に貢献することである
私が成長することで、人は幸せになれる
※文言に「周囲との関係」や「バランス」といった言葉を必ず用いることが大切なことではなく、「ホリスティックな観点をもって活用する」ことが重要です。
3-6.許可型を活用する
許可型とは、「私は〇〇してもよい」という形で、自分に許可を出すアプローチのアファメーションです。
思い込みには、自分の中の憲法や法律のようなものもあり、「やっていいこと」「いけないこと」の判断が無意識の中にあります。
「苦しくても、仕事で楽をしてはならない」
「やりたいことがあっても、身分相応でなければならない」
「人に頼ってはいけない、迷惑をかけてはならない」
こういった思い込みが過剰にあると、新しい何かにチャレンジすること、または何かを目指すこと、人とつながること、より良いコミュニケーションを取ることなどが、行いにくくなります。
上記の文言を許可する形でつくると、
「私は仕事をもっと楽しんでよい」
「私は理想にチャレンジしてもよい」
「人の力をかりてもよい。私は自分をもっと大切にしてもよい」
というように、許可型のアファメーションを活用することにより、欲しい結果に向けて、小さな一歩を踏み出したり、新しい行動を生み出せるようになります。
3-7.達成型を活用する
主に達成したい目標がある場合には、これまでにお伝えしたことを用い、
達成する未来の期日をつけて宣言する形で表現します。
ポイントは、「今」「日付」「具体的」「感情」です。
5.アファメーションの実践
ここでは作った文言をどのように活用していくか、その具体的なやり方。
5-1.声に出す
最もオーソドックスなやり方が声に出すということです。書いた文章を読み上げます。
出し方は、ささやく、つぶやく、叫ぶといったアプローチがあります。
5-2.書き出す
文言を何度も書き出す、というアプローチです。
手や腕の感覚とともに、適切な信念や思い込みを脳に組み込んでいくやり方です。
ボールペン、えんぴつ、筆、万年筆などの筆記具だけでなく、書き出すものもノートやメモ、日記、付箋など、何でもかまいかません。
何度も、何度も書き出してください。
5-3.目に入る所に貼る
これは、タイトル通り、パソコンの壁紙やスマホの待受け、トイレの壁や鏡など、アファメーションの文言を意識しなくても目に付くところに貼り付けるというやり方です。
私たちは目に入れば、多くの場合それを認識するために自然に読み込みます。
頑張らなくても目に入る場所、無意識に目に飛び込んでくるところなどに書いたものを貼っておきます。
その際、以下の例のように強調したいところは、カラーやカギカッコ【 】、または文字の大きさを変えて印象付けることもできます。
5-4.誰かに言ってもらう
この「誰かに言ってもらう」というのは、あなたは以外の人に、実際に言葉を言ってもらうというやり方です。
例えば、「私は、できる」という文であれば、
「あなたは、できる」と文を修正して実際に言ってもらいます。
実際にやるとわかりますが、臨場感が格段に高まり、言葉だけでなく、感情的なものも動かされます。私たちの脳と心は感情にアプローチされることで、その情報をインプットしやすくなりますので、ぜひ活用してください。
5-5.音声で活用する
これは二種類あります。先に紹介した「言ってもらう」の言葉をそのまま録音して、必要な時に何度も聞いていくことです。
もう一つは、作成したアファメーションの文言を自分で録音し、それを何度も音楽のように聞いていくことです。
気持ちが滅入っているときは、抵抗が起きやすくなりますので、リラックスしているときに行うのが、特に有効です。
5-6.証拠を集める
アファメーションを始めたら、その言葉を信念として強化するために証拠を集めます。
例えば、あなたが引っ込み思案で、つくったアファメーションが、「自分を表現することで、周囲に貢献できる」だとします。
そこで職場や家族、またプライベートで、自分を表現してみて、あなたの提案に上司が反応したり、お客様に受け入れてもらえたり、家族が喜んだりといった実際に置きたことを日記のように書いていくことです。
自分を表現することで、「やっぱり周囲は笑顔になるし、貢献できるんだなぁ」と思える日記、またはリストを作っていくことです。
作りたての思い込みは、生まれたての赤ちゃんのようなもので、育てていくことであなたを支える信念になります。
5-7.キャッチコピー
最後は文章作りの応用編として、キャッチコピーのように文章を作るやり方をご紹介します。
言葉は情報を伝達するだけでなく、イメージを喚起させる力があります。
例えば「起業家」という言葉を使う時、ある人にとっては「挑戦」「自由」「行動力」といったイメージがあります。
その場合は以下のような言葉をつくります。
「私は〇〇界の起業家。斬新なサービスを生み出し、新しい時代を作ることができる。」
「カリスマ」という言葉があります。
この言葉に「圧倒的」、「卓越」、「洗練」、「突き抜けている」といったイメージをもつのであれば、自分の存在を「カリスマ美容師」、「カリスマ経営者」、「〇〇界のカリスマ」といった文言をつくると効果的です。
例えばあなたが、情熱的で、エネルギッシュになりたければ、
「私は、この業界の松岡修造。周囲を希望の光で熱くさせることができる」
こんな文言ができます。
6.危険!アファメーション実践上の注意
アファメーションを活用する時、自分の中で抵抗が起こるときがあります。
私はできる → そんなこと言ってもどうせできない
私は優秀な母親だ → どうせ口先だけだ
こんな感じの抵抗です。
こういった場合、やればやるほど、抵抗の声が、アファメーションとなって、マイナスに働きますので、こんな時は以下の二つの方法を活用します。
6-1.許可型を活用する
抵抗が起きる時は、3-6でご紹介した許可型を使います。
「私はできる」の場合でしたら、
「私はやってもよい」「私はやれることをやってもよい」「できることはやってもよい」
「私は優秀な母親だ」の場合でしたら、
「私は優秀な母親を目指してもよい」「私はもっと能力を発揮してもよい」
このように活用していきます。
6-2.「しつつある」を活用する
未来の望ましい状態をつくるアファメーションですが、「今はそうじゃない」という声が聞こえてくると、これもマイナスに働きます。
ですので、こういった場合は「しつつある」という言葉を使って、緩和していきます。
「私はできる」の場合でしたら、
「私はできつつある」
「私は優秀な母親だ」の場合でしたら、
「私は優秀な母親になりつつある」
と活用します。
6-3.具体的な計画や行動を!
プロのアスリートで、練習をまったくやらず、アファメーションだけで、勝利を手に入れようとする人はいません。
目標設定や計画の設定、自分の強みの強化、弱みへの対応、レベルアップ、具体的な行動などが重要です。
こうしたことをサポートするのが、アファメーションです。